連載3            沖縄・帆掛サバニレース 

第3回  南城市長杯・帆掛サバニレース2012 2012.9.23



© 2012 Shinya Imaizumi

僕の大好きなもの。
妻を初めとしていっぱいあるけれど、
ことサバニに関しては深い愛着がある。

 20歳になりたての頃、シーカヤックを漕いで島へ渡った。木の骨組みにナイロンの皮を張ったファルトボートというフネで、折り畳んでリュックに入れ、旅ができる。
 沖縄島北端から、まず与論島に渡った。かつて沖縄と日本がお互いに船上で「復帰」を願った場所だ。今の沖縄の状況は厳しいが、なんとかして基地のない平和を実現できないだろうか。
 海からやってきた若者は海人たちの手厚い歓迎を受けた。海が優しいだけでなく、厳しいことも知っているからだろう。夜はすぐ宴会だった。焼酎につぶれてしまい、覚えていない。当時の写真には、古いサバニの上で魚をさばく男たちの姿がある。
 そのあと沖永良部島へ渡った。次に徳之島へ渡ろうとしたとき、サンゴ礁の縁に生まれる波をまだ知らなかった僕は、あっけなく飲まれて、フネは大破した。骨の折れたカヤックを連れてフェリーに乗り、泣く泣く帰ったのだった。
 このころからサバニは僕のひとつの憧れになっていった。

帆を立てて、風に乗っていくのがいい。“糸満漁師は海上で嵐に遭うと、サバニをひっくり返して凌ぐ”“遠くミクロネシアのほうまで渡っていた”などと聞くと胸が高鳴る。
 沖縄では、こうした想いを持つ人々がけっこういる。競技化するハーリーとは別に、先人の智恵に学ぼうと、帆を使うサバニレースが開催されるようになった。主のいなくなった昔のサバニを再生する人々もいる。

© 2012 Shinya Imaizumi
大きめのサバニ。左右に二列座ることができる。

 サバニは大きいものから小さく細いものまで多様だが、使用する海によって形態が変わってきた。沖縄の海に特徴的なイノー(サンゴ礁内)の漁では、取り回しがよく軽量な小型サバニが有効である。僕のカヤックは一人で担げるサイズだが、それに近い6mくらいのサバニもある。造りをまじまじと近くで眺めると、その研ぎ澄まされた造形美に感動してしまう。
…好きなのでつい話が長くなってしまった。
依頼されての撮影ではなかったので、空撮も伴走船からの写真もないけれど、島を周回するということだったので、岸から撮らせてもらった。さあ、写真に行ってみよう。


© 2012 Shinya Imaizumi
今回は奥武島が会場。イカの日干しが壮観だ。この海の豊かさを窺い知る。

© 2012 Shinya Imaizumi  © 2012 Shinya Imaizumi
イソギクの花が、波のかぶる厳しい環境にたくさん咲いている。サバニたちが海に浮かびはじめた。

© 2012 Shinya Imaizumi
帆掛サバニの後ろ姿。カッコよすぎる。

© 2012 Shinya Imaizumi © 2012 Shinya Imaizumi
修復した古式サバニにクバ笠。シマの伝統を受け継ぐ。

© 2012 Shinya Imaizumi
潮風に磨かれたマストが、鯨の骨のように美しいカーブを描く。


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13時、スタートの銅鑼が鳴った。

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© 2012 Shinya Imaizumi
古くなったサバニを直した “南風(はいかじ)”に、いのちが吹き込まれる。

© 2012 Shinya Imaizumi
水と風と自分と。仲間と自分と。

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風が弱いので漕ぎが重要となる。 ダイナミックな漕法の“えみ丸” 

© 2012 Shinya Imaizumi © 2012 Shinya Imaizumi

森さんが艇長を務める伝統サバニ「海想」。並んで競い合う艇も。

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気の遠くなるような年月をかけ、サンゴが創った海岸。

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遥かな海を旅してきた風が、帆を押していく。

© 2012 Shinya Imaizumi
古代からひとは、人力でどこまでも旅をしていた。

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© 2012 Shinya Imaizumi
気温が上がり、陽炎が立ちのぼる。海面ギリギリのアングルでゆらめきを写し込む。

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船を曲げる。傾いたときのラインが美しい。“純礁”の船名もすてきだ。

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サバニが帰ってきた。

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© 2012 Shinya Imaizumi
コース全長12キロ。 疲労困憊して、また海が好きになる。

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競技委員長の船はマストが折れ、漕ぎでゴール。おつかれさまでした!

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© 2012 Shinya Imaizumi
海は、何があっても、僕たちの生まれた場所なのだと思う。

© 2012 Shinya Imaizumi
ノンアルコールビールで乾杯!サントリーさんありがとうございました。
その後、30分ほどの清掃で出たゴミ。
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夕暮れ、乗船体験が行なわれた。どこか懐かしい風景に、この島はアジアの一部であることを実感する。
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© 2012 Shinya Imaizumi 
島を創るサンゴ石の上にカメノテが暮らす。僕たちの生きている星のことを考える。

© 2012 Shinya Imaizumi
レースを終えたサバニが、漕ぐことなくゆったりと進んでいく。
僕のなかの時間が太古へと遡っていく。


※ さらに帆掛サバニを知りたい方は、今回も出場した「チームあやかじ」(八重山山原東京混成古式琉球鱶船帆漕団)のサイトをぜひご覧ください。津輕さんのブログの「大から小へ」という一文には感じるものがあります。




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